Amazonの戦略。ヤマトを利用していたが方向転換しヤマト切り

「Amazon」著:成毛 眞さん

上記の本を読んだうえで筆者の考えをまとめたのがこのブログである。

アマゾンは2019年現在、アマゾンフレックス(AmazonFlex)という仕組みを生み出して、個人事業主の軽貨物ドライバーを集め、オファーをスマートフォンのアプリ上で配信し、荷物を運ばせる自前の物流の試作バージョンを始めている。

1時間に大体10個前後の荷物量で1時間当たり約2,000円。単価で言えば約200円ということになる。このことを念頭に置いて本文へ移るとする。

目次

日本の宅配業界のレベルの高さが要因

日本の宅配といえば、注文した商品が明日には届くのが当たり前の状況になっている。さらに配達時間の指定までもができる。国土の違いを考えたとしても、米国では考えられないサービスの良さである。

ヤマトに関しては全国各地にセンター(拠点)を構えることによってサービスのスピードを格段に上げているし、佐川、日本郵便に関しても営業所や局の数がヤマトに比べて少ないが、それでもかなりの配達速度で荷物が到着するのである。

売上から考えた場合に日本では日本の物流に任せた方がいいと当初Amazonは考えていたはずだ。

単価に比べて提供されるサービスが高ければこだわりなく外部に委託するのがAmazonのやり方だ。

ヤマトから見たAmazonは

ヤマト運輸における荷物の総量のうち、約15%がAmazonの荷物である。(2017年)

しかし単価が安く、売り上げは上がるものの、経費を勘案すると損益ギリギリで実質利益は少ない。薄利多売になっていた。

2017年の春先にアマゾンの当日配送から撤退し値上げを要求したのだ。ヤマトの社員の残業時間やサービス残業など改善する部分も多く、荷主に強気の姿勢で交渉にあたったのだ。

ヤマトのアマゾン向けの運賃は280円前後とされていたが、400円以上とする方向で合意した。

一方佐川は

2013年にAmazonとの契約を打ち切っている。

売り上げより利益重視に舵を切った形だ。荷主との運賃値上げ交渉の結果、2019年現在業績は好調。株価もヤマトを大きく引き離した。全体の利益率が向上した結果マーケットが反応したと思われる。

ここで単価の話に戻そう

現在AmazonFlexにて1個当たりの単価が200円前後という話をした。

ヤマトが取り扱う単価400円以上に比べて最低でも半額である。なかなか単価の話は軽貨物ドライバーの中に入ってこないが、こういう現実を見ていくと、単価150円前後で配達している軽貨物ドライバーが、かなり安い単価で請け負っているという現実も見えてくる。

今までは自前の物流を持たなかったAmazonが、AmazonFlexで単価200円前後でオファーを流し、更には各地域で法人格のデリバリープロバイダーがAmazonの荷物をまとめて請負い、軽貨物ドライバーを募集してエリア固定で仕事を回している。

ここまでの説明でわかると思うが、Amazonがヤマトから離れているのである。

荷物の総量の15%がなくなった場合、ヤマトの委託やフランチャイズ、そして自社化するために募集したアンカーキャストに置いても、その地位を危ういものとしている。

そして配送自社化しているのはAmazonだけではないということだ。

ECショップの楽天は、楽天エキスプレスという軽貨物ドライバーを独自に集めた流通網を構築しているし、その他のECショップも追従している。

運賃の適正化も重要だが、ここまで荷主を無視した経営を続ける場合、さらなる荷主のヤマト離れが発生するであろうことは想像に容易である。

委託切りで有名なヤマトだが、これからはアンカーキャスト切り、社員のリストラが始まる可能性も否めない。